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コラム

円安で注目される「出稼ぎ日本人」の存在


過度の円安はデメリットが多く、国内に住む日本人の生活は苦しくなっています。その一方で注目されているのが、海外で働く「出稼ぎ日本人」です。
先日、米国で年収8000万円を稼ぐ日本人の寿司職人が話題になりました。日本での修業時代の年収は300万円。米国に渡ってニューヨークの寿司店で働くようになって年収は600万円に倍増したそうです。お金を貯めて自分の店を持ち、その上で年収8000万円になったとのこと。
上記の例は並々ならぬ努力のたまものであり、もちろん海外に行けば誰もが大金を稼げるわけではありません。しかし、海外で働きながら生活できるワーキングホリデーを利用すれば、日本の給料の2倍の収入が得られるといいます。雇われている人でも日本の2倍稼げる点は魅力です。現地の物価も日本の2倍と考えるべきですが、シェアハウスなどに住んで節約に励み、お金を貯めている人もいます。
今から11年前の2011年10月31日、1米ドル75円32銭の戦後最高値を更新しました。その後は徐々に円安に進み、アベノミクス以降は比較的に安定していた為替水準が2021年以降さらなる円安に振れていきます。そして2022年に入り円安ドル高が急激に進行し、10月20日にはついに1米ドル150円台まで下落。32年ぶりの円安水準となりました。11年間で円の価値は半分となったのです。
 

東日本大震災後に史上最高値の「1米ドル75円32銭」に

2007年6月以降、それまでの円安から大幅な円高のトレンド転換が発生しました。主要国の中で日本の金利が最も低いことから、市場がリスクオフの局面では「円キャリートレード」が拡大しました。
円キャリートレードとは金利の低い日本円で資金を調達して、外貨で運用すること。当時、リーマンショックやギリシャ危機などで信用不安が増大してリスク回避の傾向が強まり、円高が進行したのです。輸出大国だった日本にとって、円高は死活問題でした。
2011年3月の東日本大震災で日本は甚大な被害を受け、福島第一原発の事故による不安も背景に円高は進みました。国力を反映するはずの為替相場でなぜ実態と異なるレートとなったのでしょうか。
それは、多額の保険金支払いが必要な保険会社や復旧資金が必要な企業が、外貨建ての資産を売却するのではないかという思惑からといわれています。そして、2011年10月31日に1米ドル75円32銭に最高値を記録。この日、政府日銀は大規模な為替介入を実行しています。
 

2022年から急激な「円安ドル高」にトレンド転換

この円高は2012年の第2次安倍政権発足まで継続します。2013年4月に日銀総裁に黒田東彦氏が就任し、日本も大規模な量的金融緩和を開始したことから円安ドル高にトレンドが転換しました。コロナ禍の2020年後半に一時円高になりましたが、その後再び円安ドル高に。2022年からは日米金利差の拡大から円安が急速に進行し、10月についに150円の大台を突破しました。
1ドル100円を切る時代には渇望されていた円安ですが、皮肉なことに輸出大国だった日本は今や貿易赤字国。過度な円安は石油や食糧の輸入コストが上がり、インフレにより国民の負担が増すばかりとなりました。景気が活発になるインフレと違い、賃金上昇を伴わないインフレでは国民の購買力は上がりません。
総務省が発表した2022年8月の消費者物価指数は、総合指数で前年同月比プラス3.0%となりました。アベノミクスで目標とされていた2%の物価上昇率は達成されたにもかかわらず、日銀は大規模緩和の継続を明言しています。
一方、米国連邦準備制度理事会(FRB)は利上げの継続を表明しており、今後日米の金利差はさらに拡大するとみられます。少なくとも2022年のうちは円安が落ち着く可能性は低いのではないでしょうか。
 

円安やインフレに強い投資は?

日本ではデフレが長く続いたために、政府が掲げる「貯蓄から投資へ」のシフトがあまり進みませんでした。しかし、円安によるインフレから円資産が目減りし、投資の必要性を感じるようになった人も少なくないでしょう。
投資は預貯金と違い、将来の収益が確定していません。しかし、インフレに強い資産への投資は資産価値の目減りを防ぐ「守り」の目的もあります。リスクに不慣れな人がいきなり大きなリスクを取る必要はなく、最初は少額、または低リスクな商品から買い付けて徐々に慣れていくとよいでしょう。
為替に限らず、市場の動向の長期的な予測は誰にとっても難しいものです。そのため、避けるべきなのは何かに偏った一点集中のような投資です。
たとえば、円安の場合に米ドル建ての資産を勧められることもあるでしょう。しかし、全財産を米ドル建てにするのは危険です。資産の一部を米ドルで持つのはよいことですが、それ以外のさまざまな資産にも分散しましょう。
インフレにもデフレにも強いとされている不動産投資の中で最も低リスクな都心のワンルームマンション投資は、サラリーマンや公務員の投資先としてひと際輝きを放っています。