2026年4月から、新しい社会保障制度とし「子ども・子育て支援金制度」が導入されることが決定しました。一部ではこの制度が「独身税」であると批判され、独身者が不利になるのではないかという懸念の声も聞かれます。
「子ども・子育て支援金」は、「独身者」だけが金銭的負担するわけではない
現在は「独身税」という言葉があまりに印象的でひとり歩きをしていますが、「子ども・子育て支援金制度」はあくまで「全世代型社会保障」の一環として、社会全体で子育て支援を支えるという考えに基づいて策定されています。医療保険料を支払っている全員が、独身者・既婚者・高齢者などを問わずに負担するものです。
ただ、制度の恩恵を受けられるのは子育て世代のみとなりますので、独身者や高齢者、子育てが終了した世代は負担増のみを強いられるという指摘はそのとおりで、それが「独身税」という言葉を生み出した原因でしょう。
今まで高齢者支援に偏りすぎていたわが国の社会保障を、一部とはいえ全世代負担型で子育て世代支援に振り向けたことは、評価すべきだと思っています。
ただ、予算の規模感としては、こども未来戦略の「加速化プラン」で年間3.6兆円程度、うち子ども・子育て支援金制度で1.3兆円程度であり、年間予算が100兆円の桁に達する年金・医療・介護の高齢向け社会保障と比較すると、まだまだアンバランスであると感じます。
支援金の負担額と、子ども1人あたり給付改善総額は?
支援金の負担額は図表1のとおり、最終的には1人あたり月額で350円~600円、全体平均で450円程度になると見込まれています。現在負担している医療保険料に上乗せする割合は、およそ5%程度です。
支援金をあてる事業による0~18歳までの間の平均的な給付拡充(累計)は約146万円になると試算されています。その内訳は、児童手当拡充のほか、妊婦のための支援給付(妊娠・出産時の10万円相当の給付金)、こども誰でも通園制度(乳児等のための支援給付)、出生後休業支援給付(育児休業給付手取り10割相当)の創設などです。
あくまで概算のシミュレーションですが、1人の国民が一生涯に負担する「支援金」が月450円・60年間とすると、総額32万4000円となります。夫婦2名で64万8000円の負担増となるのに対し、子ども1人あたりが受ける恩恵が総額146万円ですので、表面的には「結婚して子どもをもうけたほうが得」となるように見えます。
ただ、この金額が制度の目標とする「少子化を反転させること」につながるレベルであるかは、極めて疑問だと言えるでしょう。