杉並区はこれまで、「住まいは生活の基盤」との考え方を積極的に示してきた。一方、居住が不安定な人への支援には課題を感じていたという。
低額所得者向けの住宅としては公営住宅があり、世帯の月収が15万8000円以下(障がい者・高齢者・未就学児がいる世帯は21万4000円以下)の場合に入居可能だ。
しかし、希望者が多く、入居が叶わないケースもある。国土交通省の資料によると、2021年度の公営住宅の公募倍率は、全国平均で3.6倍、東京都が16.9倍、大阪府が4.9倍となっている。そうした状況の中で、区は民間の賃貸住宅の空室に着目。住宅ストックを有効に活用した施策として、この新しい制度を設けた。
民間の賃貸住宅は、公営住宅よりも家賃が高い傾向にある。低額所得者にとっては大きな負担になりうることを踏まえ、区は年間で30万円(1カ月あたり2万5000円)を助成する。ひとり親世帯と子どもが3人以上の世帯が対象だ。
2024年度は、条件を満たす世帯が36あった。これらの世帯に助成する金額として1080万円(30万円×36世帯)が2025年度の予算に盛り込まれた。議会の予算承認を経て、4月以降に本格的に始動する見込みだ。
さらに、東京都は11月7日、「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」の運営事業者候補を選定した。
都は子育て世帯等に向けたアフォーダブル住宅(相場より安い賃貸物件)の供給促進を掲げており、民間事業者と共にファンドを組成しアフォーダブル賃貸住宅を供給する。都が100億円を出資して複数のファンドを創設し、民間出資と合わせてファンド規模総額200億円を目指す。
運営事業者候補は
————————————————–
(1)(株)SMBC信託銀行・(株)萬富、
(2)野村不動産(株)、野村不動産投資顧問(株)(共同出資者:京王電鉄(株))、
(3)(株)ヤモリ、三菱UFJ信託銀行(株)、
(4)(株)LiveEQuality大家さん、(株)りそな不動産投資顧問、(株)マックスリアルティー
————————————————–
の4コンソーシアム。
(1)(2)については、投資対象を新築マンションとして、子育て支援をテーマに市場家賃の80%程度で貸し出す。(3)は空き家を活用して賃貸住宅を供給し、市場家賃の80%程度で貸し出す。(4)については、ひとり親支援や子育て支援をテーマに既存・新築マンションを投資対象とし、市場家賃の75%程度での賃貸を目指す。
今後、各コンソーシアムと調整後、ファンド契約を締結。今年度内に各ファンドに対して合計100億円の出資を実施する。2026年度以降順次アフォーダブル住宅供給を行なっていく。
区営住宅の落選者に年30万円の家賃補助、杉並区が打ち出した「都内初」住宅政策
カテゴリー:コラム
公開日: 2025年11月17日
公開日: 2025年11月17日


